　この二つは全く同じポーズで、実はただのアングル違いです。アングルが違うだけでポージングの意味はガラっと変わります。ポージングはよくできてるのにアングルや構図が合ってないせいで意図したとおりのイメージが伝わらない、というのはよくあることだと思います。
　こんな感じで、ポージングに関しての個人的な知見を書いていこうと思います。ちょっと長いです。「躍動感について」と「人の存在を感じさせる表現について」で前半後半に分けました。
躍動感を出すために
①スネから下を見せない
　　
　片足を曲げてもう一方の足を伸ばし、体を少し傾ける。動きを付ける定番のポーズですが、膝をしっかり曲げスネから下が隠れるようなアングルで撮ることで前方から見た表面積が小さくなり、より手前に向かってる印象になります。
　左足は画角から出して、右側からフレームインしつつあるような動的な印象に。右手の剣は特に面を見方向たりせず、胴に対して遅れて追従し、奥行きや進んできた経路を示す方向へ向けました。
②片足しか見せない
　下半身が細く先細る形になって、矢印のようなシルエットになり移動の向きもわかりやすくなります。本来見える部分が見えなくなることで、安定した通常の姿勢ではないことが一目瞭然に。
脚をバラバラな方向に伸ばせば、振り回されるように飛んでるイメージに。
　躍動感とは違いますが、しなやかさやソッと降り立つようなイメージにも。下の写真はSEEDアクションシステムの股の引き出し機構は使わず、腰をひねらせることで脚を一直線上に並ぶようにしています。
③対角線を使う
　写真でのポージングなら、これから進む方向とこれまで進んできた方向を対角線上にのせるようにすると、移動の方向を強調できます。
　また、剣など手前にきてるものが対角線の隅にくるようにすれば、大きさや奥行きを強調できます。この写真は少しカメラ自体を近づけて撮っています（＝パースがついている）。いわゆる勇者パースの手法です。
　さらに対角線はレイアウトにも使えます。こちらは左上半分に体も羽も収まるようにして、銃だけそこからつき出して強調。フリーダムは逆さポーズも映えますね。ガンダムは上下のない宇宙が舞台で、モビルスーツと人でもアイレベルに差があるのでアングルはもっと自由でいいと思います。
　対角線は便利に使えるので、雑に使っちゃいます。
　対角線ではないですが手前にフリーダムの羽を置いて、スピード線のような動きを強調するライン作りをしてみました。前景に何か置けば奥行きが出るので、前後の動きを強調するときにも使えると思います。
④前方から足の裏を見せる
　足の裏を見せることで、ブレーキを掛けたり制動しているイメージに。後退しながら銃撃したり、防戦に転じる瞬間の表現にも。
　降下シーン。
　踏みつけに焦点を当てたり。
　わんぱくな感じやコメディリリーフなどのキャラクター性を表すのにも使えます。ガンダム本編だとチュチュ専用デミトレーナーやホビーハイッザック、Gセルフなどで見られた表現です。
⑤フレームイン・アウト
　機体を写真のフレームからはみ出すようにすると、画角の外から入ってくるような動きの表現や、画角の外にも空間的広がりを感じさせる表現になると思います。巨大な機体が画面に収まりきらない感じを出すのにも使えます。
　SEED撃ちやバエルポーズなど、ガンプラで人気だったり初心者向けとされるポーズは基本的にマネしやすい止め絵のポーズです。それに対して一連の流れで見せる殺陣やアクションは、前後の動きの情報ありきなので静止画に落とし込むのが難しいです。こういったアクションをどうにかこうにか表現するには、色々な構図の力も借りるのが良いと思います。
　また、ポージングをつける時はなるべく敵機や小物などの客体も置くといいと思います。何に対してその行動をしているのか、首などの向きもどこへ向けばいいかわかりやすくなります。他にもユニコーン本編でデブリがシナンジュのヤバイ機動性を強調していたように、客体を置くことで被写体を引き立てることもできます。
人の気配を出すために
①ハンドサインを出す
　生身の人間相手にしたり、方向を指し示したりする非言語コミュニケーション。何か感謝されたときにわざわざ「どういたしまして」と言うのも恩着せがましくて、少しだけ手を上げたりする。一見擬人化しすぎたポーズに見えて、「自分もそうするかもな」と思えるようなリアリティあるポーズでもあると感じます。現代の感覚だとアバターのエモートが近いものかもしれません。モビルスーツをただの鉄の塊でなく「応答できる存在」として見せれると思います。
②上を向く
　首の可動は必死さや感情を乗せられるので好きな可動です。首の下がぱっくり空いて見えてしまいますが、首にメカディティールなんかを入れられたら「見えてはいけない場所」を「ハッチオープンのように見せる場所」に転換できそうです。
　戦闘を終え、戻ってきたシールドブーメランを見上げる図。
　こちらはカメラを少し近づけてやや下から撮影、ライフリの脚からシールドブーメランまでを対角線上に乗せて奥行きを強調。位置関係がわかりにくくなり状況説明的な写真ではなくなりましたが、何かもの思うようなパイロットの心情にフォーカスする写真になったと思います。モビルスーツを擬人化させたような表現は、「ほんとは別の理由で首を上げてるだけなんだけど、見る側の人間が勝手にそこに感情を読み取ってしまう」ような状況設定を作れるかが大事な気がします。
③つかむ
　腿についたライフルに横から握れる取手を付けました。取手を付けて握ったポーズを取ると、「身構えてる」「狙っている」といった意思が可視化され分かりやすくなると思います。F91のヴェスバーにあってフリーダムのレールガンにないものですね。
　手は添えるだけでもポージングになります。ガンキャノンのキャノン砲に手を添えるか添えないかの違いですね。
落ちたくないからつかむ
　　切り離されても握り続けられるのも機械ならでは。
　グリップが二つあれば、二人でつかめる。逆に、こういう見せ方をしたいからここにグリップをつけよう・こういう形状にしようという発想も出てきます。たしかGレコのモンテーロもクリムの演出のために胸にお立ち台をつけた、という逸話があったと思います。
④他人をつかむ
　他人をつかむと関係性を可視化できると思います。こちらは安定性の低いファラクトの盾となる随伴機という設定で作ったザウォート。背中にある取手をつかむことで、協力関係、あるいは主従関係を可視化できたと思います。
　敵に掴まれれば無理やりさや暴力性に。
　取手じゃなくても、つかめるものは何でもつかめるのが手のすごいところ。
　ビームタスキをひっぱりあう。こぜりあいをしている感じや、Gガンらしいちょっとシュールな絵面に。
　手をかざして銃口をそらす。無用な殺生を避ける倫理性や慎重さのあるキャラクターと、そしてもう一人は冷徹だったり任務に忠実なキャラクター。対称的なキャラクター性を一枚で表現できます。
⑤抱きしめる
　なにかを運んだり守ったり。塗装剥げリスクが高いポーズです。たしかルブリスは胸の一番擦れる面だけ成型色のままにした気がします。
⑥手を伸ばす
　手の先には何か大事なものを添えて。
最後に
●上手（かみて）と下手（しもて）　
　舞台や映像の用語です。「何か仕掛ける側を右側（上手）に配置」し「それを受ける・反撃する側を左側（下手）に配置」すると攻守や立場の強い弱いを印象付けられます。必ずこうしろというものでもないと思いますが、ガンダムを表現するうえで知ってて損はないです。
●動詞を想像する    　モビルスーツのデカールを戦闘機などの実際にある兵器から参考にしたり、現代の爬虫類から恐竜の姿を想像したり。イマ・ココにないものでもイマ・ココにあるものの延長として捉えるとリアリティが出ます。「その状況で、その能力があって、その目的があったら自分もそうするだろうな」と思わせるような動詞や動作を想像できれば、ポージングも同様にリアリティを表現する手段になりえると思います。　だいぶ長くなってしまいました。なにか参考になるところがあれば幸いです！