8月19日（土）、「ビルダーズノート」クローズドβテスト参加者を対象としたスクラッチビルドセミナーが、オンライン上で開催されました。今回はビルダーのSSCさんが講師となり、スクラッチビルドについて解説をいただいています。
スクラッチビルドとは市販のキットを使わずに、プラ板やパテでパーツを自作する製作方法です。
※このレポートで掲載された製品の写真、あるいはテキストには、コラボやプロモーションの意図は含んでいません。
【講師紹介】
SSCさん
ディティールとプロポーションに富んだ写真を撮影・投稿中のビルダーさん。『月刊ホビージャパン』や『ガンダムフォワード』などでライターをされています。
そもそもガンプラ製作にスクラッチは必要か？　という点について言えば、基本的には不要とのことでした。
スクラッチが必要になるケースは、以下の通りです。
・市販されていない機体を作りたい場合。
・自分好みの形状・大きさのパーツを作りたい場合。
商品が売っていなければ自分で作る。好みのパーツがなければ自作で賄うという、工作好きな方ほどハマりそうな作り方となっています。
【プラ板工作の基本的な考え方】
SSCさん「全部のパーツを作るやり方を『フルスクラッチ』と言いますが、今回はガンプラのキットをベースにして、一部のパーツだけを作る『セミスクラッチ』でいきます」
パーツを作成する際には、パテを盛って整形する方法などがあるそうです。素材は多々ありますが、今回はプラ板を使ったスクラッチをメインに進めていきます。
プラ板は直線的なパーツの加工に向いているので、例えばガンダムなどの、連邦系の機体を作るときなどに重宝するとのこと。
SSCさん「プラ板は安価ですし、ネット通販などで簡単に手に入ります。カッターや接着剤などの、入手しやすい道具で基本的な加工できるのもいいですね。プラスチック同士なので、接着が簡単なところもメリットです」
0.3mm、0.5mm、1mmと規格が統一されているので、寸法を測りやすいところも、加工のしやすさに一役買ってくれるのだとか。
SSCさん「デメリットとしては、プラ板でスクラッチしたパーツは平面過ぎたり、エッジが立ち過ぎたりして、キットのパーツと合わせたときに違和感が出やすいです」
【プラ板工作の手順/箱組】
材料を切り出す前に、まずはケント紙を使って型紙を作ります。ケント紙には厚みがあるので、切り出し
た型紙を他のパーツと合わせることで、大きさや形状の確認ができる点が便利とのことでした。
SSCさん「下書き前にサンドペーパーで表面を軽くヤスリがけしておくと、シャープペンの線が書きやすく、プラスチック同士が溶着しやすくもなります」
続いては下書きのケント紙を基に、プラ板を切り出す作業に入ります。
力を入れ過ぎずに、数回に分けて切り込みを入れることがコツとのことです。
SSCさん「切り出したプラ板には誤差が生じるので、同じパーツを重ねて、均等にヤスリをかけます。重ねたパーツを瞬間接着剤で仮止めをしますが、このとき３、4箇所を点止めにしてください」
後ほど引きはがすことになるので、ここでは３、４カ所を止めるに留めておきます。
SSCさん「切り出したとき、型紙よりも少し大きくなることが多いですが、ヤスリを掛けるとちょうど同じくらいの大きさになると思います。余分に切り過ぎた際は、その分のプラ板を貼ってあげればいいだけなので、ここは形状を揃えることだけを考えてください」
SSCさん「接着剤の強度を考えると、「タミヤセメント」がおススメです。時間がない場合はクレオスの「Mr.セメントSP」を使うこともありますが、接着するプラ板の厚さが0.3mm以下の場合は乾燥後にパーツのヒゲが出ることもあるので、瞬間接着剤を使うときもあります」
【プラ板スクラッチパーツと、ガンプラを馴染ませるコツ】
SSCさん「プラ板でスクラッチしたパーツは、ガンプラと比べるとシャープになり過ぎるので、馴染ませるためにはガンプラ側のエッジを出して、シャープにしていきます」
手順としては、金属ヤスリ　→　400番ヤスリスティック　→　800番ヤスリスティックの順番で磨いていくそうです。
市販されているガンプラのキットは、パーツの角が尖りすぎないように、小さな面を取っているとのこと。この小さな面をヤスリで消すと、メリハリのついたシャープな印象になるそうです。
SSCさん「それからプラ板でスクラッチしたパーツの方は、C面を取った方がガンプラと馴染みやすいです」
SSCさん「ある程度面積が広いパーツには、プラ板らしい平面が残ってしまうので、スクラッチパーツの上に0.3mmから0.5mmのプラ板を貼ります。中心部からパーツの端に向かって、柔らかなRの形を作るようにしてください」
キットのパーツには最初からRの形がついているので、やや平坦に削ります。反対にプラ板は平面からのスタートなので、若干丸みを帯びた形に調整するとのことでした。
【スクラッチパーツとキットの接続】
SSCさん「次は私が自作したスタークジェガンに、追加の胸部装甲を取り付けるところまでの工程をお見せします」
SSCさん「複数のパーツに同じ穴を貫通させて、接続軸を一緒に開けていくと、接続した際にズレにくいです。今回はネオジム磁石で接続する方式で作りましたが、これに目隠しもしていきます」
【プラ板で曲面を作る方法】
SSCさん「プラ板は曲げると元に戻ります。つまり形を保持できないので、1ｍｍ厚の場合は0.5ｍｍを2枚重ねて装着します。こうすると曲面を維持したまま接着できるんです」
【使用工具】
SSCさん「柄沢ヤスリはザクザク切れるので、必需品になっています。ヤスリスティックと合わせて、スクラッチビルド以外でも愛用していますね」
列挙されたノギス、ディバイダー、垂直ドリルガイドについても、何かと使えるとのことでした。ちなみに柄沢ヤスリや、類似の単目ヤスリは4000円前後のようです。
SSCさん「穴あけポンチは0.5mm刻みで、7mmくらいまであります。プラ板を抜くときにはもちろん使えますし、マスキングテープを抜いて、円形にマスキングができたりもするので、持っていれば何かと便利かと思います」
穴あけポンチは1500円ほどで売っていることが多いそうです。作業が非常に捗るとのことなので、お手元にない方はぜひ導入をご検討ください！
【ディティール・デザインの考え方】
SSCさん「私の場合は、30年くらい前から出ている「ガンダム・センチネル」を参考にしてデザインを考えています。悩んだときにはこれを見て、使えるものを探します」
最近では「マスターアーカイブモビルスーツ」から着想を得たり、他のビルダーさんの作品を参考にしたりすることもあるそうです。
SSCさん「あとはディティールのお話ですが、キットの既存色を塗り分けるだけでも、ディティール感が出てきますね」
SSCさん「キットの上からプラ板パーツの貼ることもあると思いますが、その場合はプラ板を貼った側面をスジボリすると、ディティール感の密度が増しますね」
【質疑応答】
Q.元のキットと馴染ませるためにプラ板を貼って、パーツの際に向かって削り込むと、光が透けるくらいの薄さになって、剥離することがあると思います。そのときは溶着系の接着剤を使うのがベストでしょうか？
A.タミヤセメントの白蓋を使ってもらえれば、ばっちり一体化すると思います。削っていく中で薄皮一枚分が剥がれるときもあると思いますが、そういう場合は流し込み接着剤でカバーしています。
Q. （上の質問に関連して）パテで造形するときにも、同じことがありますよね？ 
A.パテで嫌なところが、まさにそこです。削り込んでいくと薄いところが剥げてしまうので、今はほとんどプラ板で工作するようにしています。
Q.曲面の作り方で、0.5mm厚のプラ板を重ねるというお話について。平面ならクリップで止めておけばいいと思うのですが、曲面の場合は固まるまで、手で押さえておく必要がありますか？　
A. 押さえなくても大丈夫です。上のプラ板が下のプラ板を押さえてくれるので、0.5mm厚のプラ板を重ねておくと、結構保持できるんですよ。
Q.各パーツを塗装してから接着剤を付けるのと、全部接着してから塗り分けをするのでは、どちらがいいですか？
A.私はマスキングを手間に思うので、できるだけ塗装してから接着しています。軸打ちしておいて、接着のときにズレないようにはしていますね。
Q.ガンプラ作りのルーティーンはありますか？　スクラッチに限らず、基本の手順を知りたいです。
A.キットから切り離した際のパーティングラインを綺麗に整形して、仮組が終わってから面出しをして、スジボリを彫り直して、洗浄して、サーフェイサーを吹いて傷をチェック。傷を修復してから再度洗浄して、サーフェイサーを吹き直してから塗装という流れが多いです。
Q.スミが入りにくい塗料もあると思いますが、クリアは使いますか？
A. ツヤ消し塗料で塗装したところにスミ入れする際には、クリアを吹きます。スミ入れをしてデカール（シール）を貼って、乾燥してからクリアを吹いて、最後にツヤ消しのトップコートで仕上げます。
Q.綺麗な作品を作ろうと決意した、きっかけは何ですか？
A.ライターにならないかと誘われたときに、入賞してからでないと自信が持てないと思ったんです。なので、「コンテストで賞を取るぞ！」というのがきっかけでした。
【参加者の感想と、結びの言葉】
・いずれはスクラッチしてみたい機体があるので、まずは道具を揃えてみようと思います。
・聞きたかったところを全部聞けました。キットの中から部分的に直したい部分は出てくるので、スクラッチの技術はこれからに活かしていきたいです。
・他の人がどう作っているのか、細かいところを１から１０まで聞ける機会はなかなか無いので、非常に参考になりました。
・「ライターさんはこう考えているんだろうな」という、推測の部分を実際に聞けたのがありがたかったです。細かい作業から逃げずに続けようと思います。
SSCさん「あまり難しいことはしていませんが、スクラッチは面倒ではあるんですよね。その面倒なところまで含めて、楽しんでくださればと思います（笑）。これをきっかけにして、皆さんもスクラッチを始めてくださると嬉しいです」
【セミナーを終えて】
今回のセミナーでは、現役でご活躍中のライターさんから、スクラッチビルドについてご教示いただきました。発売されていないマイナーな機体や、オリジナルのガンプラを作れるようになると、今までとは違う楽しみ方ができるようになるかもしれません。
スクラッチを実践してみた方は、「#スクラッチビルドセミナー」、「#アドバイス実践してみた」のタグを付けて、ぜひビルダーズノートにご投稿ください！
また、ビルダーズノートでは今後もイベントを企画していますので、今回のレポートで興味を持たれた方も、次の機会に参加してみてはいかがでしょうか？
イベントへの感想や、「こんなイベントがあったら参加してみたい！」などのご要望もお待ちしておりますので、この記事のコメント欄に、ご意見をお寄せいただけると嬉しいです。よろしくお願いします！
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