7月21日（金）、「ビルダーズノート」クローズドβテスト参加者を対象とした動画撮影セミナーが、オンライン上で開催されました。今回はビルダーのゆきしろさんが講師となり、動画撮影のポイントについての解説をいただいています。
※このレポートで掲載された製品の写真、あるいはテキストには、コラボやプロモーションの意図は含んでいません。
【講師紹介】
ゆきしろさん
ガンプラのコマ撮りを中心に、SNSに作品を上げているビルダーさん。専門学校でCGを学んだ後、制作会社で活躍中。
今回は始めに自己紹介として、参加者の皆さまが好きなガンダムアニメのオープニングと、エンディングはどれかという話題からスタートしました。
やはりガンダムが共通言語のようで、思い思いに好みの作品を上げていく、和やかな雰囲気でセミナーが始まっています。
今回のセミナーのために、ゆきしろさんが動画を作成してくださいました。まずは動画を視聴してから、撮影時のお話に入っていきます。
【スマホで動画を撮ってみた】
ゆきしろさん「普段やっているコマ撮りは手間がかかりすぎるので、今回は「スマホで簡単に撮影」をコンセプトにしました」
ゆきしろさん自身、スマホでの撮影はこれが初めてとのこと。3分の動画を作るために、撮影だけで5、6時間かかったそうですが、慣れれば時短できそうだと仰っていました。
身近な道具で撮影できる点もそうですが、被写体の代わりにカメラを動かしたり、一回転させながら撮れたりと、取り回しがいいところがスマホ撮影のメリットに挙げられています。
【撮影時の背景をどうするか】
ゆきしろさんが参加者に向けて、どういった動画に興味があるかを尋ねていくと、複数の方から「リアルな絵を撮りたい」という希望が出ました。
しかしリアリティを追求するなら背景も必要なので、撮影に適した場所を探したり、現地に行ったりするのが手間だという声も。
ゆきしろさん「分かります、分かります。背景は結構困りますよね。やっぱり家で撮影するとジオラマ感というか、そのリアリティがなくなってしまうので、僕もそこで苦労しました」
ジオラマ撮影の背景で悩む方は、やはり多いようです。しかしこの点はいい解決方法があると、冒頭で流れた動画のメイキング映像を見せてくれました。
ゆきしろさん「ジオラマにガンプラを置いた状態からアングルを決めて、そこから動かせる範囲内でライティングを考えています。今回は結構簡易的にやりましたね」
この撮影方法で気を付けることは、テレビを使用すると映り込みがあることです。撮影者やスマホが画面に写り、後々の編集でカットしたいシーンが多くなるのだとか。
特に白い服を着ていると反射しやすいので、撮影の際は暗い色の服で臨みましょう！
【主人公は右から左に走る？】
ゆきしろさん「いろいろなアニメとか、映画とかでもそうですけど、主人公が走っている時って、右から左に行くことが多くないですか？」
右から左に走るのは未来に向かっていく演出であり、反対に、左から右に向かうのは戻ったり帰ったりする表現でよく使われるそうです。だからアニメのオープニングなどを改めて見ると、主人公は未来に向かうために、右から左に移動していることが多いのだとか。
その法則に従って、冒頭の動画でも主人公機のガンダム・エアリアルが右側に立ち、敵機のダリルバルデを左側に配置したとのことでした。
ゆきしろさん「ずっと同じ構図では飽きるので、途中で左右を反転させます。ここに立場が逆転したという演出を掛けて、立ち位置の反転後はガンダム・エアリアルが不利な描写をしていきました」
主役、主人公はなるべく右側に配置して、左側の敵と対峙させる。この構図を踏まえた上で、次は撮影時のアングルについて触れていきます。
【上から撮るか、下から撮るか】
ゆきしろさん「例えば敵が圧倒的な力を見せつけてから、上から俯瞰した絵を見せることによって、「この敵には勝てない」と思わせる演出になります」
上からのアングルで窮地を演出する手法ですが、これはハリウッドでも、日本のドラマでも使われているそうです。
左右のどちらに配置するか、上下のどちらで撮るかで見せ方が変わってくるので、撮影しているのがどんなシーンかを考えながら、角度と配置を変えるのが動画撮影のコツのようでした。
【空白の使い方】
ゆきしろさん「ドラマとかで恋人たちが別れ話をして、どちらかが去っていくシーンがあるじゃないですか。例えばこのガンダム・エアリアルが、ガンダムの恋人としましょう。」
ゆきしろさん「画面内に謎の空白、スペースがあると、視聴者は不安の感情を持つんです。ガンダム・エアリアルの背中を見送るガンダムの左側に、空白を作ってあげることで、二度と再会できないような喪失感を演出できます」
被写体を中央に寄せず、画面内にちょっとした空白を作るやり方も、ドラマではよく使われているそうです。「もう僕の隣にはいないんだ」という説明をせずとも、見せ方で雰囲気を伝えられるのだとか。
【キャラクターの向きで印象が変化】
ゆきしろさん「話している方向でも印象が変わりますよね。後ろを見ながら話していると、誰に話しているのか、何を考えているのかと、見えていない部分に想像力をかきたてられます」
向いている方向が変わるだけで、シーンの雰囲気が大きく変わりそうですね。このカットに入る前後の流れから状況を判断できるので、セリフや状況説明がなくとも、絵を見せるだけで十分にストーリーを伝えられるとのことでした。
ゆきしろさん「例えば前のシーンでも目を逸らし続けていたら、互いに、もうお別れの時間なんだなと察している演出になります。そういうものは喋らなくても、映像を見てる人たちに伝わるものなんです」
前後の脈絡については、連続で繋げていくと分かるようになる演出なので、これは動画でしかできない手法だと言います。
この点でアニメのオープニングやエンディングには、セリフがありません。演出でキャラクターの相関関係などを匂わせているので、よく見ると結構なネタバレが含まれているとのこと。
【距離感で印象が変化】
ゆきしろさん「寄せた絵と、引いた絵では、見ている人たちの印象がすごく変わるんです」
角度の次は距離のお話になりましたが、ガンダムとガンダム・エアリアルが恋人関係という先ほどの設定を引き継いで、また例を見ていきます。
例えば映画でも、登場人物が明確な意思を感じさせるシーンは、寄りで、正面を向いて撮っていることが多いそうです。遠近感による演出があったなら、制作側が読み手に、何かを伝えたいシーンと考えていいみたいですね。
ゆきしろさん「逆にどんどん角度が変わっていくと、見ている人は客観的に思うんですよ。画面の前にいる自分に向かって話しているんじゃなくて、誰かに話しているのを覗き見しているような感じで捉えるんです」
今言ったものを踏まえれば、自分がどう撮ったら、この映像はどう見えるのかが、おのずと分かってくるとのこと。こうした遠近感の役割と、方向の演出効果を理解した上でアングルを決めていくと、より撮影しやすくなるそうです。
ゆきしろさん「僕が動画を作るときに意識しているのは、誰がどの向きで、どこまでの距離感になっているのかですね。常日頃から考えているのは角度と距離感です」
カメラでもスマホでも、この考え方は変わらないようです。撮影に向いたアングルを決めてからは、録画を回しっぱなしにして何度も撮り、一番映りがいいカットを探していくのだとか。
また、人は見たことがないアングルに好感を持ちやすいので、それもアングルを決める際のワンポイントとしているそうです。
意外な発見をした時に、好奇心が刺激されるということでしょうか。慣れてくるとドラマや映画の中から、新しいアングルを探して自分の絵に組み込むこと、それ自体が楽しくなってくるそうです。
【編集ソフトと作業環境】
動画を撮影してからは、様々な方向から撮影したカットを繋ぎ合わせて、一本の動画にしていきます。編集作業に使うソフトについては、ゆきしろさんが実際に使用しているものから幾つかご紹介していただきました。
・Fillmora　（© 2023 Wondershare.）
公式の解説動画があり、初心者に優しいソフトです。エフェクトが豊富なのも魅力ですが、一部の機能には課金が必要となります。
・VLLO　（©2023 VIMOSOFT）
Fillmoraと同様に、初心者に優しい作りのスマートフォン用アプリです。
・Inshot　（©2020 InShot lnc.）
直感的で簡単な操作ができる、SNS向けのアプリです。iOS/Androidのどちらでも使えますが、PC版がないこと、完成動画にロゴが入ること、商業利用できない場合があることなどが注意点となります。
・Adobe Premiere Rush　（© 2023 Adobe.）
無料でも使える中級者向けのアプリで、スマホ版もあります。エフェクトがなく、保存先がクラウドのみという点で、純粋な編集に向いたソフトと言えそうです。
・Adobe Premiere Pro　（© 2023 Adobe.）
Adobe Premiere Rushより高機能なサブスクリプション型の有料ソフトです。テレビやweb向けの動画コンテンツなど、映像制作業界で幅広く使われている、より本格的なものになります。
・Adobe After Effects（© 2023 Adobe.）
撮影時に、スタンド棒などを消すために使用。映像の加工などに特化したソフトですが、撮影の角度に気を使い、あらかじめ余計なものが写らないように撮ることも、省エネのコツとのことでした。
・DaVinci Resolve 18　（© 2023 Blackmagic Design Pty. Ltd.）
ハリウッドでも使われている、中級者～上級者向けのアプリです。無料版でも十分な性能とのことですが、現在のところスマホ版はリリースされていませんでした。
・iMovie（© 2023 Apple Inc.）
iOS/macOS用のアプリです。初心者に優しい直感的な操作性ですが、編集時に使えるエフェクトが少ないところが弱点となります。
・Final Cut Pro　（© 2023 Apple Inc.）
こちらもiOS/macOS用のアプリです。初心者に優しい直感的な操作性に加えて、カラー補正が優れているなどの利点があります。しかし買い切りのソフトとは言え、価格が4万5千円と高額になっていますので、こちらは本格派用かもしれません。
基本無料のものが多いので、まずは軽く触ってみて、扱いやすいと思ったものを採用するのがよさそうですね。特徴がしっかりと差別化されているので、自分の環境に合ったソフトから選ぶのもいいかもしれません！
【動画編集実演コーナー】
次は編集ソフトを使い、実際にどんな作業をしたのかが解説されました。ゆきしろさんが使用したのはAdobe Premiere Proですが、今回のセミナーは撮影がメインのため、ここは簡単な説明となっています。
大まかには以下の3ステップとなりますが、ポイントは尺を意識することのようです。
・撮影した動画を、編集ソフトの中にまとめて入れる。
・必要のないシーンをカットする。
・エフェクトや効果音を追加する。
ゆきしろさん「不要シーンのカットで尺を調整しましたが、編集で追加したエフェクトも、視覚効果の速さを調整してテンポを上げています」
たまにピントが合わなくなるため、何度か再生して、映りが悪いところはカットしていく。この作業を繰り返して、ちょうどいい長さの動画にしていくそうです。
【視点の切り替え】
ゆきしろさん「視聴者は動いているものを追うんです。カットが変わるギリギリまで見ているので、次のカットで視線が集まる場所は、前のカットで視線が注がれていた場所の周辺に設定します」
目線が散らかるとストーリーが分かりにくくなるので、目で追ってストーリーが完成するように編集するのがよいそうです。
また、撮影する時から意識していると編集が楽になるので、編集した前後の映像を考えながら撮ると、それぞれのカットが繋ぎやすくなるメリットもあるのだとか。
【サウンドエフェクトのおすすめ管理方法】
効果音などについては、前に作った作品のものを流用しているそうです。サウンドエフェクトを全て残した状態で、動画部分だけを入れ直すというやり方です。
編集のプロジェクト内で移動させた方が作業は楽に済むので、編集していて足りないものだけを、パソコンに用意したBGM用のフォルダから引っ張ってくるのだとか。
外部のフォルダを何度も開いて、音を確認するのは面倒なので、編集ソフト内に散らばらせておき、クリックするだけで聞ける環境にしているということですね。
【Ｑ＆Ａと参加者の声】
最後に参加者の皆さまから、ここまでを通しての質問を募るコーナーとなりました。しかしゆきしろさんの方から適宜質問を募集して、回答しながらセミナーが進んできたため、軽い補足に留まっています。
Q.撮影前にプロットは作りますか？
A.絵コンテなどは一切作らないですが、大体の流れは考えますね。ガンダム・エアリアルが倒される、復活する、ビットを出す、射撃するなどの項目を、頭の中では考えておいています。
Q.効果音は買っているんですか？
A.今日の動画に関しては、全部フリーのものです。まずは無料のものを探してみるのがいいと思います。
Q＆Aを終えてからは、参加者の皆さまに今日の感想を尋ねていきました。実際の声から抜粋してご紹介します。
「配置によって物の見え方、キャラクターの存在感が全然違うというのは、面白かったですね」
「動画じゃなくても、連続した写真を載せるときに使えるテクニックがあったと思います」
参加者が動画に興味を持ったのはもちろんですが、写真への応用法を考えたいというご意見も多かったです。
また、講師のゆきしろさんとしても、またやりたいと思えるセミナーになったようでした。
ゆきしろさん「今回は喋り通しで実践が少なくなったこともあるので、次の機会があれば新作を作った上で、コマ撮りのこともお伝えできればと思います」
【セミナーを終えて】
本日のセミナーは動画制作のプロから、撮影時の演出効果を直々に伝授してもらうという、普段はなかなか聞けない分野のお話でした。
ガンプラを左右のどちらに配置するか。上下左右のどこから撮るか。どの距離から映すかの3点を意識して、皆さまもぜひ動画撮影にチャレンジしてみてください！
ビルダーズノートではまだ機能テスト中のため、動画投稿はできませんが、動画撮影に挑戦してみた方は「#ガンプラ動画教室」、「#アドバイス実践してみた」のタグを付けた、感想のご投稿をお待ちしています！
また、ビルダーズノートでは今後もイベントを企画していますので、今回のレポートで興味を持たれた方も、次の機会に参加してみてはいかがでしょうか？
「こんなイベントがあったら参加してみたい！」などのご要望もお待ちしておりますので、この記事のコメント欄にご意見をお寄せいただけると嬉しいです。よろしくお願いします！